◆ Ciscoルータ ( メモリの種類 )
CiscoルータはCPU、シャーシ、インターフェース、モジュール、IOS、そして色々な種類のメモリから
構成されます。今回はそのメモリに焦点をあて解説していきます。Ciscoルータは、下図のとおり大きく
4種類のメモリ(ROM、RAM、NVRAM、フラッシュメモリ)で構成されます。各メモリには下図の通り、
Ciscoルータを起動させて、動作させるために重要な情報が格納されています。詳細を見ていきましょう。
◆ ROM ( Read Only Memory )
ROMは読み込み専用メモリです。ROMには3つのプログラムが格納されており、このプログラムは消去する
ことはできません。なお、レガシーなCisco機種のROMにはmini IOSというプログラムも格納されています。
mini IOSはIOSを最小限の機能を有するプログラムのことであり、ブートヘルパーイメージとも呼ばれます。
ROMのプログラム |
説明 |
POST |
電源投入時に実行する自己診断プログラム。CPU、メモリ、インターフェースのハードウェア試験を実施。 |
ブートストラップ |
Cisco IOSのロードするためのプログラム。ブートストラップはコンフィグレーションレジスタ値の参照と
Cisco IOSの検索と読み込みを行う。先ず、コンフィグレーションレジスタ値に従い起動方法を指示する。
その後、Cisco IOSを検索してCisco IOSをロードする。(デフォルトはフラッシュメモリからロードする)
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ROMMON |
パスワード復旧やトラブルシューティングの際に使用するプログラム。パスワードを忘れた場合、ルータ
を起動するタイミングで「Alt+B」キーを押す(※1)とROMMONモードに移行しパスワード回復できる。
フラッシュメモリに格納されたCisco IOSが破損している場合には、自動的にROMMONモードに移行する。
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※1 Tera Termを使用する場合は「Alt + B」、ハイパーターミナルを使用する場合は「Ctrl + Break」キーを押す必要があります。
◆ RAM(Random Access Memory)
RAMは読み書き可能なメモリです。このメモリにある情報だけはルータの電源OFF時に全て消去されます。
RAMには、現在稼働中の設定情報(running-config)だけでなく、フラッシュメモリ内のIOSが展開する
領域としても使用されます。RAMはいわばルータの作業領域です。以上の事からこれらの情報だけでなく
動的な情報であるルーティングテーブルやARPテーブルなどについても、RAMに格納されることになります。
※ ここでいうRAMは一般的にはDRAMと呼ばれており、機器仕様にもDRAMと一般的に表現されています。
◆ NVRAM ( Non-Volatile Random Access Memory )
NVRAMは読み書き可能なメモリです。不揮発性ランダムアクセスメモリであるNVRAMはRAMとは異なり
ルータの電源OFF時にもNVRAM内に格納された情報は保持されます。NVRAMには、保存された設定情報
(startup-config)とコンフィグレーションレジスタ(ルータの起動方法を決定する値)の2つが存在します。
◆ フラッシュメモリ
フラッシュメモリは読み書き可能なメモリです。FLASHも呼ばれます。ここにはIOSが格納されています。
FLASHにあるIOSは一般的に圧縮されているため、実際には、IOSはRAMに解凍されて動作しています。
◆ Ciscoルータ ( 起動順序 )
Ciscoルータに電源を投入した後の正常な起動順序です。基本的にどの機種にも適用できる内容です。
項番 |
項目 |
項目の説明 |
@ |
POSTの実行 |
POSTを実行してハードウェアの自己診断を開始する。 |
A |
ブートストラップの実行 |
ブートストラップのプログラムを実行する。 |
B |
コンフィグレーションレジスタ参照 |
ブートストラップによりコンフィグレーションレジスタの値が読み込まれて、
起動モードが決定する。(セットアップモード or ROMMONモード or ・・ )
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C |
Cisco IOSソフトウェアの検索 |
ブートストラップによりIOSが検索される。NVRAMにあるstartup-configに
boot systemコマンドで定義した内容に従って、読み込むIOSを決定する。
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D |
Cisco IOSソフトウェアのロード |
ブートストラップによりIOSがロードされる。boot systemコマンドで定義
した内容に従いIOSが読み込まれる。boot systemコマンドでの定義がない
場合、フラッシュメモリ内にあるIOSが読み込まれて RAM にロードされる。
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E |
コンフィグレーションの検索 |
NVRAM内にstartup-configが存在するかどうかを検索する。
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F |
コンフィグレーションのロード |
NVRAM内にstartup-configが存在する場合、startup-configをRAM上に
ロードしてrunning-configとして実行する。NVRAM内にstartup-configが
存在しない場合、セットアップモードとして起動する。
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G |
Cisco IOSソフトウェアの実行 |
running-configの内容に従って、IOSソフトウェアが実行される。
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フラッシュメモリにCisco IOSソフトウェアが存在しないか、またはIOSソフトウェアが破損している場合、
ROM内にmini IOSがあるならmini IOSで起動します。ROM内にmini IOSが存在しない場合はROMMONで
起動します。それぞれの起動状態においてルータに表示されるプロンプトの表示は以下のとおりとなります。 ※ IOSはboot systemコマンドの定義により、TFTPサーバ経由で起動することも可能ですが、一般的にそのような起動はしません。
フラッシュメモリ内のIOSで正常に起動 |
ROM内のmini IOSで起動 |
ROM内のROMMONで起動 |
Router> |
Router(boot)> |
rommon 1 > |
以下にネットワークエンジニアとして知っておくべきコンフィグレーションレジスタの値を4つ紹介します。
コンフィグレーションレジスタの詳細は、Cisco IOS(コンフィグレーションレジスタ)をご参照下さい。
主なコンフィグレーションレジスタ値 |
動作内容 |
0x2100 |
ROMMONで起動させる。(基本的に使用しない) |
0x2101 |
mini IOSで起動させる。(基本的に使用しない) |
0x2102 |
正常にIOSで起動させる。(デフォルトの値) |
0x2142 |
正常にIOSで起動させるがNVRAMを見させない(パスワードリカバリーで使用) |
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