◆ VPN におけるトンネリングと暗号化
VPN接続は、トンネリングと暗号化によって実現しています。トンネリングを行えるプロトコルには
PPTP、L2F、L2TP、IPsec、GRE などがあります。一方、これらのうち暗号化を行えるプロトコルは
IPsecだけとなります。従って、VPN接続のためにIPsecを使用すればこのプロトコルだけで暗号化と
トンネリングを行うことができます。つまり、他のプロトコルをトンネリングに使用した場合、暗号化
のために別途IPsecなどのプロトコルを使用する必要があります。この章ではこのIPsecを中心に解説
していきます。L2トンネリングの解説は PPTP L2F L2TP 、L3トンネリングは GRE でご確認下さい。
◆ VPN における基本用語
用語 |
説明 |
トンネル |
インターネットなどの公衆網を利用した仮想のポイントツーポイント接続 |
暗号化 |
平文(クリアテキスト)と呼ばれるもとの情報を解読不能な形式に変換するプロセス |
復号 |
暗号化された暗号文を平文に戻して、ユーザが情報を解読できるようにするプロセス |
ハッシュ関数 |
ある与えられたデータから、そのデータを代表する固定長の数値を生成する演算手法 |
認証 |
ネットワーク接続へのアクセスを試みる「ユーザ or プロセス」の身元証明のプロセス |
認可 |
認証後のユーザ or プロセスに、ネットワーク接続リソースにアクセスする権限を与えるプロセス |
公開鍵暗号 |
ペアとなる2つの鍵を使用してデータの暗号化と復号を行う暗号化方式 |
公開鍵 |
公開鍵暗号方式で使われるペアの鍵のうち、暗号用の公開される方の鍵 |
秘密鍵 |
公開鍵暗号方式で使われるペアの鍵のうち、復号用の公開されない方の鍵 |
CA |
暗号化を目的とするデジタル証明書の作成、発行、管理する仕組み |
共通鍵暗号 |
暗号化と復号に同じ鍵を用いる暗号化方式 |
共通鍵 |
共通鍵暗号方式で使われる暗号化と復号のための鍵 |
Diffie-Hellman鍵交換 |
安全でない通信チャネルを使用して、共通鍵を安全に送受信するための鍵交換方式 |
◆ 主なVPNプロトコルの比較表
IPsecだけで暗号化とトンネリングの2つが行えるのなら、他のプロトコルを使用する必要がないのでは
ないかという疑問が生まれるかもしれません。しかし下表を見て頂ければ分かると思いますが、例えば
1対Nのサイト間VPN接続を行って、その拠点間で例えばOSPFを使用したい場合はIPsecではそれを実現
できません。IPsecではマルチキャスト伝送が行えないのでこの場合はGREの力を借りる必要があります。
VPN
プロトコル |
何のプロトコル上で
伝送できるか |
何のプロトコルを
伝送できるか |
マルチキャスト
伝送は可能か |
データ暗号化
完全性保障 |
ポピュラーな
ソリューション |
IPsec |
IP |
L3( IP ) |
× |
○
IPsecのみでOK |
IPユニキャストの
トンネリング |
GRE |
IP |
L3(IP, IPX, etc) |
○ |
×
代替案:GRE/IPsec |
ルーティングプロトコル
のトンネリング |
L2TP |
UDP/IP, IP, ATM |
L2( PPP )
L3(IP, IPX, etc) |
○ |
×
代替案:L2TP/IPsec |
PPPの延長とした
認証ネットワーキング |
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