◆ OSPFv3 - アドレスファミリ
OSPFv3アドレスファミリでは、IPv4とIPv6を1つのOSPFv3プロセスでサポートすることができます。
従来のOSPFv3の設定では、IPv4の場合はOSPFv2を起動させて、IPv6の場合はOSPFv3を起動させる
必要があり、個別にプロセスを起動させる必要がありましたが、OSPFv3アドレスファミリの設定では、
IPv4とIPv6を1つのOSPFv3プロセスでサポートできるので、IPv4とIPv6のルート情報は単一のリンク
ステートデータベースに保持することができます。デュアルスタック環境でとても役立つ設定手法です。
The OSPFv3 address families feature is supported as of Cisco IOS Release
15.1(3)S and Cisco IOS Release 15.2(1)T.
router ospfv3 コマンドでは、1つのOSPFプロセスで定義することから、IPv4とIPv6で共通で使用する設定は
1つのプロセスの中で設定(例えば上図におけるルータIDなど)します。一方、IPv4、IPv6に個別に設定したい
パラメータは、address-familyコマンド配下に設定します。なお、OSPFv3ではnetworkコマンドを使用せずに
インターフェース上でルーティングプロセスを有効にします。
◆ OSPFv3 - 基本設定
OSPFv3のルーティングプロトコルのトラフィックはIPv6により伝送されます。そのため、IPv4ネットワークの
ルート情報もIPv6パケットにカプセル化されて送信されます。従って、router ospfv3コマンドで、IPv4だけを
使用する場合でも先ず以下の「 ipv6 unicast-routing 」を有効化させる必要があります。
◆ IPv6ルーティングの有効化
(config)# ipv6 unicast-routing
次に、OSPFv3プロセスを起動させる設定をします。プロセス番号はローカルでのみ使用する番号となります。
◆ OSPFv3プロセスの起動
(config)# router ospfv3 proccess-id
(config-router)#
次に、OSPFのルーティングプロセスを有効化させるためにaddress-familyの設定をします。
◆ address-familyの設定
(config-router)# address-family [ ipv4 | ipv6 ] unicast
次に、ルータIDの設定をします。OSPFv3プロセスで共通の値を使用する場合、つまりaddress-family ipv4でも
address-family ipv6でも同じ値を使用したい場合、router ospfv3コマンド配下で設定をして、address-family
ごとに個別に設定をします。
◆ ルータIDの設定 - OSPFv3プロセスで共通の値を使用する場合
(config)# router ospfv3 proccess-id
(config-router)# router-id router-id
◆ ルータIDの設定 - アドレスファミリごとに使用する場合
(config)# router ospfv3 proccess-id
(config-router)# address-family [ ipv4 | ipv6 ] unicast
(config-router-af)# router-id router-id
最後に、インターフェース上でOSPFv3を有効化させます。
◆ インターフェース上でのOSPFv3の有効化
(config-if)# ospfv3 process-id address-family area area-id
コマンド引数 |
説明 |
process-id |
OSPFv3のプロセスID
|
address-family |
OSPFv3を有効化させるaddress-familyの指定( ipv4 または ipv6 を指定 )
|
area-id |
インターフェースが所属するエリアIDの指定
|
最低限の設定は以上となります。その他にもオプション設定は多数ありますが、アドレスファミリに対して
passive-interface(特定のI/Fからのアップデートの停止)、area 〜 range(ABRでのエリア間ルート集約)
summary-prefix(ASBRでの外部ルート集約)などの設定が主なコマンドとして挙げられます。
◆ OSPFv3アドレスファミリの設定例
OSPFv3アドレスファミリの設定を利用して、IPv4とIPv6の経路情報をやり取りする設定例は次の通りです。
R1(config) # ipv6 unicast-routing
R1(config) # router ospfv3 1
R1(config-router) # router-id 1.1.1.1
R1(config-router) # address-family ipv4 unicast
R1(config-router-af) # exit-address-family
R1(config-router) # address-family ipv6 unicast
R1(config-router-af) # exit-address-family
R1(config) # interface GigabitEthernet0/0
R1(config-if) # ip address 10.0.0.1 255.255.255.0
R1(config-if) # ipv6 address 2001:1:1:10::1/64
R1(config-if) # ipv6 address fe80::1 link-local
R1(config-if) # ospfv3 1 ipv4 area 0
R1(config-if) # ospfv3 1 ipv6 area 0
R1(config) # interface GigabitEthernet0/1
R1(config-if) # ip address 172.16.1.254 255.255.255.0
R1(config-if) # ipv6 address 2001:1:1:1::1/64
R1(config-if) # ipv6 address fe80::1 link-local
R1(config-if) # ospfv3 1 ipv4 area 1
R1(config-if) # ospfv3 1 ipv6 area 1
|
R2(config) # ipv6 unicast-routing
R2(config) # router ospfv3 1
R2(config-router) # router-id 2.2.2.2
R2(config-router) # address-family ipv4 unicast
R2(config-router-af) # exit-address-family
R2(config-router) # address-family ipv6 unicast
R2(config-router-af) # exit-address-family
R2(config) # interface GigabitEthernet0/0
R2(config-if) # ip address 10.0.0.2 255.255.255.0
R2(config-if) # ipv6 address 2001:1:1:10::2/64
R2(config-if) # ipv6 address fe80::2 link-local
R2(config-if) # ospfv3 1 ipv4 area 0
R2(config-if) # ospfv3 1 ipv6 area 0
R2(config) # interface GigabitEthernet0/1
R2(config-if) # ip address 172.16.2.254 255.255.255.0
R2(config-if) # ipv6 address 2001:1:1:2::2/64
R2(config-if) # ipv6 address fe80::2 link-local
R2(config-if) # ospfv3 1 ipv4 area 2
R2(config-if) # ospfv3 1 ipv6 area 2
|
設定例では、IPv4ルートとIPv6ルートをルーティングさせていますが、OSPFv3アドレスファミリの設定では、
IPv4ルートだけをルーティングさせることも可能です。冒頭で解説した通りIPv4ネットワークのルート情報は、
IPv6パケットにカプセル化されて送信されるため、IPv4ルートだけをルーティングさせる場合でもコンフィグ
として「ipv6 unicast-routing」は必要である点と、I/FにIPv6アドレスを設定しない場合「ipv6 enable」の
設定は必要となるため忘れないようにしましょう。なお、OSPFv3のステータス確認コマンドは以下の通りです。
OSPFv3のステータス確認 |
説明 |
show ospfv3 neighbor |
OSPFv3ルータが認識しているネイバー情報をアドレスファミリごとに表示
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show ospfv3 interface brief |
OSPFv3が動作するインターフェース情報の一覧を表示
|
show ospfv3 database |
OSPFv3のリンクステータス情報を表示
|
show ip protocols |
動作しているIPv4のルーティングプロトコルに関するパラメータを表示 |
show ipv6 protocols |
動作しているIPv6のルーティングプロトコルに関するパラメータを表示 |
show ip route |
IPv4のルーティングテーブルの情報を表示 |
show ipv6 route |
IPv6のルーティングテーブルの情報を表示 |
|