◆ IPv6のルーティングプロトコル
IPv6のルーティングはIPv4と同じようにスタティックとダイナミックの2種類があります。IPv4と同様に
スタティックは、宛先ネットワークとネクストホップを指定したスタティックルートを静的に設定します。
ダイナミックもIPv4と同様、ダイナミックルーティングプロトコルにより動的に宛先経路を隣接ルータと
やりとりします。IPv6のダイナミックルーティングプロトコルには、RIPng、OSPFv3、IS-IS for IPv6、
EIGRP for IPv6、MP-BGP4などがあります。今回は RIPng について概要と設定方法を紹介していきます。
◆ RIPng とは
RIPngはRIP next generationの略でありIPv6で動作するRIPのことです。主な特徴は以下の通りです。
項目 |
説明 |
@ |
IPv4で稼働するRIPv2をベースにしたプロトコルであり、最大ホップアカウントは15となる。 |
A |
IPv4のRIPはUDPポート520を使用して送受信するが、IPv6のRIPngはUDPポート521を使用して送受信する。 |
B |
宛先経路情報はIPv6プレフィックスとなり、ネクストホップはリンクローカルアドレスとなる。 |
C |
ルーティングアップデートは、全RIPルータのマルチキャストグループを示すFF02::9宛てに30秒ごと送信。 |
◆ RIPngの設定
先ず、CiscoルータでIPv6トラフィックを転送できるようにするために以下のコマンドでIPv6を有効化します。
◆ IPv6の有効化
(config)# ipv6 unicast-routing
次に、以下のコマンドでRIPngプロセスを起動します。
◆ RIPngプロセスの起動
(config)# ipv6 router rip tag
コマンド引数 |
説明 |
tag |
IPv4のRIPv2とは異なって、IPv6のRIPngは1台のルータで複数のRIPngプロセスを起動できる。
複数のRIPngプロセスを起動させた時に、ルータ内部でルーティングプロセスを識別するために
この tag を使用する。tag には数値や名前を指定することができる。OSPFのプロセスIDに相当。
OSPFのプロセスIDと同様に、隣接ルータでこの tag の名前を一致させる必要はない。
例 (config)# ipv6 router rip P1
|
最後に、以下のコマンドでRIPngを有効にするインターフェースを指定します。
◆ RIPngを有効にするインターフェースの指定
(config-if)# ipv6 rip tag enable
コマンド引数 |
説明 |
tag |
IPv4のRIPではnetworkコマンドで指定していたが、IPv6のRIPngでは、RIPngを有効にするI/Fを
直接指定する。インターフェースで指定するtagの名前はプロセスで指定した名前と同じにする。
例 (config-if)# ipv6 rip P1 enable
|
RIPngの設定後は、show ipv6 rip、show ipv6 route、debug ipv6 rip コマンドでステータス確認を行います。
◆ RIPng の設定 - オプション設定(maximum-pathコマンド)
RIPngのルーティングテーブルにはデフォルトで最大4つのパスを乗せることができます。これらのパスは
equal-costとして同時に使用されます。この最大値はmaximum-pathコマンドで変更することができます。
◆ 設定例 : equal-cost経路の最大数 6 にする設定
Cisco(config) # ipv6 router rip RIPng
Cisco(config-rtr) # maximum-paths 6
|
◆ RIPng の設定 - オプション設定(default-information originateコマンド)
指定したインターフェースから指定したルーティングプロセスのアップデートの中にIPv6デフォルトルートを
生成することができます。default-informaitonコマンドの後にoriginateを指定すると、デフォルトルートと
その他のRIPngの経路情報を通知します。onlyを指定すると、デフォルトルートのみがアドバタイズされます。
◆ 設定例 : Gi0/0 からデフォルトルートとRIPng経路をアドバタイズ
Cisco(config) # interface gigabitethernet 0/0
Cisco(config-if) # ipv6 rip RIPng default-information originate
|
◆ RIPng の設定 - オプション設定(redistributeコマンド)
RIPng以外のルーティングプロトコルの経路情報を、RIPngのルーティングプロセスへ再配布するためには、
redistributeコマンドを使用します。再配布時のデフォルトメトリックが Connected = 1、static = 1、RIPng
の他プロセス=1、それ以外のルーティングプロトコルは 16 で通知されないのでmetricコマンドで変更します。
◆ 設定例 : RIPngのP1プロセス上でスタティックルートの再配布の設定
Cisco(config) # ipv6 router rip RIPng
Cisco(config-rtr) # redistribute static
|
◆ RIPng の設定 - オプション設定(distribute-listコマンド)
distribute-list コマンドによって、アドバタイズするRIPngのルーティングアップデート情報を「out」方向で
フィルタリングを行ったり、受信するRIPngのルーティングアップデート情報「in」でフィルタリングできます。
◆ 設定例 : Gi0/1において「2001:DB8::/16」のルートのみを受信する設定
Cisco(config)# ipv6 prefix-list PRE01 permit 2001:DB8::/16
Cisco(config)# ipv6 prefix-list PRE01 deny ::/0
Cisco(config)# ipv6 router rip process1
Cisco(config-rtr-rip)# distribute-list prefix-list PRE01 in Gigabitethernet 0/1
|
|