◆ VPLS(Virtual Private LAN Service)とは
VPLS(仮想プライベートLANサービス)は、MPLSを使用してEthernetフレームを転送させることが
できる技術のことです。MPLS網上で、仮想的なEthernet LANをVPNごとに構築できることからも、
利用するプロトコルはIPに依存しないため、いわゆるLayer 2 VPNを提供することができる技術です。
VPLSにより、地理的に分散されたEthernet LANサイトをMPLSバックボーン全体で相互接続できます。
先ず、広域イーサネットサービスで、VPLSがどのような位置づけにあるのか見てみましょう。
◆ 広域イーサネットの3つの実装方式
キャリアの提供する広域イーサネットのWANサービスは、大きく3つの実装方式があります。
1. Q-in-Q( IEEE802.1ad )
イーサネットフレームにタグを二重に付与する方式です。スタックドVLANとも呼ばれます。
2. MAC-in-MAC( IEEE802.1ah )
広域イーサネット網内だけに有効なMACアドレスを使用して、MACフレームをMACフレームで
カプセル化する方式です。PBB(Provider Backbone Bridging)とも呼ばれます。
3. VPLS(Virtual Private LAN Service)
VPLSはMPLSプロトコルを利用した方式です。VPLSは、EoMPLSの1つの形態とも言えます。
VPLSでは、広域イーサネットサービス(WANサービス)をルータで構築することができます。
◆ VPLSの仕組み
VPLSでは、MPLSで利用するラベルごとの仮想的な伝送路であるLSPを、PEルータ同士でフルメッシュに
張ることにより、EthernetフレームをMPLSを使用しMultipoint to Multipointで転送することができます。
VPLSとMPLSとの違いは、利用者(企業)から送信されるパケットをIPアドレスではなくMACアドレスに
基づき転送することができる点です。PEルータ(VPLSルータ)では、企業ごとのMACアドレスと転送先
パスの対応テーブルを持っており、その情報に基づいてラベルを付加して転送します。
MPLS網内のコアルータ(Pルータ)はそのラベルに基づきフレームを転送するだけでよく、コアルータは
MACアドレスを学習する必要はありません。
LANスイッチの場合、RSTPを実装しても障害発生時の切り替わりが約1秒は必要となってしまいますが、
VPLSルータの場合には、Fast Rerouteと呼ばれる機能によって、障害発生時に迂回経路にミリ秒レベル
にまで高速収束(パスの移行)を実現することが可能になります。
そして、VPLSではMPLSベースの冗長化機能が使えるだけではなく、MPLS網側から受信したフレームを
MPLS網側には戻さないスプリットホライズン機能によりループも防止できます。
◆ VPLSの仕組み - 2つのラベル
VPLSでは、ユーザ側から転送されるイーサネットフレームに、キャリア側のPEルータ(VPLSルータ)で
2つのラベル付けが行われます。TunnelラベルとVCラベルの2つです。
VPLSのラベル |
説明 |
Tunnelラベル |
PEルータ、Pルータ、PEルータ間のトンネルで転送するための外側のラベル。
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VCラベル |
ユーザ側のイーサネットフレームを識別するための内側のラベル。
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