◆ マルチキャスト - TTL Thresholdによる制御
マルチキャストパケットの配信範囲(スコープ)は、TTLのしきい値によって制御することができます。
TTL(Time to Live)は、IPパケットの生存時間のことであり、パケットが何ホップまで到達できるか
という形で使用されます。TTL値はルータを経由するごとに「マイナス 1」されていき、TTL値が 0 に
なると、そのパケットは破棄されてルーティングループなどを防ぐことができます。
マルチキャストのアプリでは、予めTTL値を設定できるものが数多くあります。マルチキャストルータの
インターフェースでTTL Threshold値を設定しておくことで、マルチキャストパケットの配信範囲を制限
することができます。ルータのインターフェースに設定したTTL Threshold値が、着信パケットのTTL値
よりも大きい場合には、そのマルチキャストパケットのそのインターフェース上で破棄されます。
上図ではSenderからマルチキャストパケットのTTL値を「10」にセットして送信しています。R1のGi0/1に
設定されているTTL Thresholdは「5」であることから、マルチキャストパケットは問題なく転送されますが
R2のGi0/1に設定されているTTL Thresholdは「10」であることから、マルチキャストパケットの現在のTTL
値の「8」よりも大きくパケットが破棄されます。なお、デフォルトの設定では、全てのインターフェースで
TTL値は「0」であり、マルチキャストパケットのTTL値のホップ数だけ自由に転送されていきます。
◆ マルチキャスト - TTL Thresholdの設定
(config)# interface interface-id
(config-if)# ip multicast ttl-threshold ttl
◆ R1のGi0/1において、TTLしきい値を「5」にする設定例
R1(config)# interface GigabitEthernet0/1
R1(config-if)# ip multicast ttl-threshold 5
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◆ マルチキャストパケット - 管理境界
TTL Thresholdの設定では、マルチキャストパケットの「TTL値」に基づいたフィルタリングとなりました。
管理境界の設定ではマルチキャストパケットの「マルチキャストアドレス」に基づきフィルタリングします。
管理境界の設定には、ip multicast boundaryコマンドを使用します。インターフェース上でこのコマンドを
指定すると適用したACLのマルチキャストアドレス情報に基づいてフィルタリングできます。このコマンドを
インターフェースで適用すると「in」と「out」両方が適用されるため、そのインターフェースで送受信する
マルチキャストアドレスがフィルタリング対象となります。
◆ マルチキャスト境界の設定
(config)# interface interface-id
(config-if)# ip multicast boundary ACL
◆ Gi0/1上で、プライベートスコープのマルチキャストアドレス(239.0.0.0/8)のみを送受信しないようにする設定
R1(config)# access-list 1 deny 239.0.0.0 0.255.255.255
R1(config)# access-list 1 permit 224.0.0.0 15.255.255.255
R1(config)# interface GigabitEthernet0/1
R1(config-if)# ip multicast boundary 1
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