◆ ブロードキャスト ⇔ マルチキャストの変換
マルチキャストパケットを送信できないSender、マルチキャストパケットを受信できないReceiverがいても
マルチキャストをブロードキャストで代用することもできます。
先ず、マルチキャストを未サポートのSenderからマルチキャストの代わりにブロードキャストを送信します。
次に、そのブロードキャストを受信したルータでは、ブロードキャストをマルチキャストに変換して送信して、
マルチキャストパケットとしてマルチキャストルーティングを行っていきます。最後に、そのマルチキャスト
パケットがラストホップルータへ到達すると、マルチキャストをブロードキャストへ変換してReceiverへ送信。
◆ Senderが接続しているファーストホップルータでの設定
(config)# interface interface-id
(config-if)# ip multicast helper-map broadcast multicast-address ACL [ ttl ttl ]
コマンド引数 |
説明 |
multicast-address |
Senderが送信するブロードキャストアドレスから変換するマルチキャストアドレス |
ACL |
変換対象となるパケットを指定するACL |
ttl |
オプション設定。マルチキャストアドレスに変換したパケットのTTLを指定したTTLに上書き |
◆ Receiverが接続しているラストホップルータでの設定
(config)# interface interface-id
(config-if)# ip multicast helper-map multicast-address broadcast-address ACL
コマンド引数 |
説明 |
multicast-address |
ブロードキャストへ変換するマルチキャストアドレス |
broadcast-address |
マルチキャストから変換するブロードキャストアドレス |
ACL |
変換対象となるパケットを指定するACL |
◆ ファーストホップルータ、ラストホップルータの両方で必要な設定
ブロードキャスト ⇔ マルチキャストの変換対象となるパケットは、特定のUDPポートのパケットが対象です。
具体的にはUDPポート番号37、42、53、67、68、69などです。例えば、マルチキャストトラフィックで使用
するUDPポート番号が4000である場合には「ip forward protocol udp 4000」と設定をする必要があります。
(config)# ip forward protocol udp port-number
◆ ラストホップルータで必要な設定
送信元IPアドレスが自身のインターフェースと異なるサブネットのブロードキャストパケットを転送する
ためにはダイレクトブロードキャストアドレス(ip directed-broadcast)の設定が必要です。この設定は
ラストホップルータのReceiverが接続するインターフェースで設定する必要があります。
(config)# interface interface-id
(config-if)# ip directed-broadcast
◆ ブロードキャスト ⇔ マルチキャストの変換 - コンフィグ設定例
設定ポイント1:ip multicast helper-map broadcast
⇒ ファーストホップルータ(R1)のSenderが接続されているI/F(Gi0/1)に設定
設定ポイント2:ip multicast helper-map
⇒ ラストホップルータ(R3)のマルチキャストトラフィックを受信するI/F(Gi0/0)に設定
設定ポイント3:ip forward protocol udp
⇒ ファーストホップルータ、ラストホップルータともに設定
設定ポイント4:ip directed-broadcast
⇒ ラストホップルータ(R3)のReceiverが接続するI/F(Gi0/1)に設定
R1(config)# ip multicast-routing
R1(config)# ip forward-protocol udp 4000
R1(config)# access-list 101 permit udp any any eq 4000
R1(config)# interface GigabitEthernet0/1
R1(config-if)# ip address 10.1.1.254 255.255.255.0
R1(config-if)# ip pim dense-mode R1(config-if)# ip multicast helper-map broadcast 239.1.1.5 101
R1(config)# interface GigabitEthernet0/0
R1(config-if)# ip address 10.1.2.254 255.255.255.0
R1(config-if)# ip pim dense-mode
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R3(config)# ip multicast-routing
R3(config)# ip forward-protocol udp 4000
R3(config)# access-list 101 permit udp any any eq 4000
R3(config)# interface GigabitEthernet0/0
R3(config-if)# ip address 172.16.2.254 255.255.255.0
R3(config-if)# ip pim dense-mode R3(config-if)# ip multicast helper-map 239.1.1.5 172.16.1.255 101
R3(config)# interface GigabitEthernet0/1
R3(config-if)# ip address 172.16.1.254 255.255.255.0
R3(config-if)# ip directed broadcast
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ここでは、設定をシンプルにするために、マルチキャストトラフィックの転送にPIM-DMの設定をします。
また、Ciscoの設定例では変換対象のパケットを指定するACLを詳細に指定していますが、分かりやすさを
優先して「access-list 101 permit udp any any eq 4000」のように送信元と宛先を any にしています。
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