◆ PIM-DM -(S,G)と(*,G)エントリ
Ciscoルータではディストリビューションツリーは、show ip mrouteコマンドにより確認できます。その
ディストリビューションツリーのエントリには以下の2種類があります。エントリ(*, G)が共有ツリーを
表すことから、送信元ツリーを使用するPIM-DMでは使用されないように思えますが、PIM-DMにおいては、
エントリ(*, G)は共有ツリーを表すのではなくて、(S,G)エントリのテンプレートとして使用されます。
エントリ |
説明 |
( *,G ) |
「*」は any であり「G」はマルチキャストグループ。PIM-DMでは(S,G)のテンプレートとして使用。 |
( S,G ) |
「S」はSenderのIPアドレスであり「G」はマルチキャストグループ。PIM-DMの送信元ツリーとして使用。 |
◆ PIM-DMのディストリビューションツリーで作成された(S,G)エントリの内容
@ PIM-DMでは(S,G)エントリは、マルチキャストパケットを受信した時に作成されます。
※ (S,G)エントリ作成時に、該当する(*,G)エントリがなければ自動的に(*,G)が作成されます。
A RPF情報
・ Incoming Interface:SenderのIPアドレスへの最短経路のインターフェース
・ RPF nbr:Incoming Interface の方向のPIMネイバーのIPアドレス
B OIL情報:Outgoing Interface には、RPF I/Fを除いた以下に該当する全てのI/Fが追加されます。
I/Fの初期状態は「Forward」ですが、Pruneメッセージを受信すると「Prune」状態になります。
・ PIMネイバーとなるインターフェース
・ Receiverが存在するインターフェース
・ ip igmp join-group や ip igmp static-group が設定されているインターフェース
この(S,G)エントリのOILのインターフェースのステータスには「Forward」と「Prune」があります。
PIM-DMのインターフェースの初期状態は「Forward」です。Fowardのインターフェースからは、PIM-DM
における3分毎のマルチキャストパケットのフラッディングが行われて、PIMネイバーからPruneメッセージ
を受信したインターフェースを「Prune」状態にして、そのインターフェースからマルチキャストパケット
の転送は行いません。ただし3分後には「Forward」になり、フラッディングを行いPIMネイバーからPrune
メッセージを再度受信すれば「Prune」、Pruneを受信しなければ「Forward」となり、状態遷移させます。
◆ PIM-DM - ディストリビューションツリーのステータス
Sender(10.1.1.1)からReceiver(239.1.1.5)へマルチキャストパケットを転送する下図において
PIM-DMでは(*,G)エントリと(S,G)エントリがどのようなステータスになるのかを見てみましょう。
なお、下図のディストリビューションツリー(マルチキャストルーティングテーブル)では分かりやすく
するために、フラグの情報や秒数の情報などを省略しています。
R3のLAN側ネットワーク(172.16.2.0/24)には、PIMネイバーはいません。そして、Receiverが存在せず
ip igmp join-group または ip igmp static-groupが設定されていないとします。その場合、上図の表示結果
の通りOutgoing Interfaceは「 Null 」となります。その結果、R3からR1へPruneメッセージを送信します。
R3からPruneメッセージを受信したR1はその後180秒間、R3へマルチキャストを転送しないようになります。
なお、マルチキャストテーブルを分かりやすくするために、上図では以下の2つのマルチキャストアドレスでは省略しています。
マルチキャストアドレス |
説明 |
239.255.255.250 |
Windows PCが、UPnP(ユニバーサルプラグアンドプレイ)で使用するマルチキャストアドレス |
224.0.1.40 |
PIM-SMのAuto RPで使用するマルチキャストアドレス( Cisco機器は 224.0.1.40 の Receiver ) |
|