※ 本記事は「 Catalyst QoSの仕組み 2(マッピングテーブル)」の続きの内容となります。
◆ QoSを有効にしたネットワークにおけるパケットの遷移 - キューイングとスケジューリング 1
マッピングテーブルの参照後は、パケットを送出処理するためのCoS値とDSCP値が決定しているため、
下図の内容に従って各パケットは該当するキューに格納されて、出力ポートから転送されていきます。
Catalyst3560X / Catalyst3750Xでは、下図の通り「入力キューが2つ」と「出力キューが4つ」あります。
Catalystで「分類」→「ポリシング / マーキング」で処理された後に「キューイング&スケジューリング」
で処理されます。下図の通りパケットはQoSラベルに基づいて各キューに格納されるため、DSCP値の 0 の
データパケットはインプットキューでは「input queue1」、アウトプットキューでは「output queue2」に
格納されて転送処理されていきます。※ 説明例ではポリシングは設定されていないことが前提です。
一方、DSCP値が46の音声パケットはインプットキューでは「input queue2」、アウトプットキューでは
「output queue1」に格納されて転送処理されていきます。
◆ QoSを有効にしたネットワークにおけるパケットの遷移 - キューイングとスケジューリング 2
アウトプットキューにおいてPQ処理を行うためには、送信(出力)ポートで「 priority-queue out 」の
コマンド設定が必要です。ただし、データパケットの場合には「CoS値=0、DSCP値=0」であることから
PQ処理(最優先処理)されないパケットとなります。
解説図を分かりやすくするために、解説図では着信側(Gi1/0/1)で「 mls qos trust dscp 」と設定して、
発信側(Gi1/0/2)で「 priority queue-out 」 と設定していますが、音声トラフィックは双方向で流れる
ことから、実際の設定では、Gi1/0/1とGi1/0/2の両方に「 mls qos trust dscpとpriority-queue out
」の
コンフィグが設定されます。その他にも設定すべきコマンドはありますがここではその解説を割愛します。
一方、音声パケットの場合「CoS値=5、DSCP値=46」であることから、音声パケットはPriority Queue
に格納されて、PQ処理(最優先処理)されて転送されていきます。
◆ QoSを有効にしたネットワークにおけるパケットの遷移 - ルータでのQoS処理
ルータでもスイッチと同様に「分類」「マーキング」「キューイング」「スケジューリング」の順番で
処理されます。ルータで「 LLQ 」を実装した場合、データパケットのように通常ベストエフォートで
処理するトラフィックなら、LLQの「 class-default 」のキューに格納されてパケットが転送されます。
今回焦点を当てたいのは「CoS値」です。CoS値の伝達はLAN内で終わるということを認識しましょう。
そもそもCoS値はトランクポート(タグ付けが可能なポート)でのみ伝達できるのでトランクリンクから
離れると基本的にその情報はこれ以上伝達できなくなります。また、例えばWANリンクがPPPである場合
そもそもLayer2がEthernetフレームではなく、PPPフレームとなるため、CoSの概念すらなくなります。
WAN側を「広域イーサネット」などにより、LANスイッチでトランク接続してCoS値をサイト間で伝達する
ことも可能ですが、拡張性や柔軟性に乏しいネットワークとなるため、そのようなネットワークにおいても
優先度情報は、原則としてCoS値やIPプレシデンス値ではなく、DSCP値により全体設計することが重要です。
以上の解説の通り、データパケットはDSCP値0、音声パケットはDSCP値46の優先度情報が保持された上で
WANへと転送されていくので、対向拠点ではその優先度情報に基づいて適切なQoS設定を実装させましょう。
|