◆ SD-WANとは
SD-WAN(Software-Defined Wide Area Network)とは、ソフトウェアにより定義するWANのことです。
SD-WANでは、物理的なネットワーク機器で構築したWAN上に、ソフトウェアを使用して仮想的なWANの
構築と管理を実現します。簡単に言えばSD-WANは、SDNをWANに適用した技術と言えます。
SD-WANでは管理ソフトウェアであるオーケストレータで各拠点に配置されているネットワーク機器を集中
管理することができます。SD-WANはオーケストレータのSD-WANコントローラとSD-WANルータの大きく
2つのコンポーネントで構成されます。
SD-WANコントローラは、インターネット経由でクラウドサービスとして提供を受けるかたちで導入するか、
ユーザのオンプレミス環境でハードウェアを設置する形態として導入するかを選べます。SD-WANルータは、
物理的または仮想的にネットワーク内の任意の場所に導入することができます。SD-WANルータの呼称には、
SD-WANエッジ、SD-WANエッジルータ、SD-WANデバイス、SD-WAN装置などがあります。
SD-WANでは、通信トラフィックを最適な経路に分散させることができます。機密性が高くセキュアな通信が
必要なトラフィックは閉域網のWAN回線に振り分け、音声トラフィックは回線品質の高いWAN回線に振り分け、
信頼できる特定のクラウドサービスへのトラフィックはSD-WANルータが直接収容するインターネット回線に
振り分けることが可能です。
SD-WANでは、アンダーレイネットワーク(下位層のネットワーク)に、MPLS-VPNなどのWANだけでなく
ブロードバンドなどのインターネット回線などが利用可能であり、キャリアの制約はないことが一般的です。
オーバーレイネットワーク(物理ネットワーク上に構築された仮想ネットワーク)ではSD-WANルータ間の
IPsecトンネルが構築されます。オーバーレイネットワークではアプリケーションのトラフィックを識別した
ポリシーベースルーティングが行われます。ルーティングにおけるPBRと同じ考え方です。
◆ SD-WANの機能:ZTP(ゼロタッチプロビジョニング)とは
ゼロタッチプロビジョニングとは、ネットワーク構築作業を自動化する仕組みのことです。ベンダーにも
よりますが、SD-WANルータにはデフォルトで物理インターフェースにDHCPの設定とコントローラへの
リダイレクト設定があることから、DHCP/DNS環境があれば、電源ケーブルとLANケーブルを挿すだけで
現地作業が完了します。設定情報はSD-WANコントローラから自動的に流し込まれます。
SD-WANコントローラからは、IPsecトンネルを構築するために大きく以下の2つの情報が伝えられます。
・ IPsecトンネルを構築するためのSD-WANルータのIPアドレス情報
・ 事前共有鍵とデジタル証明書などの認証情報
IPsecトンネルを確立後、SD-WANコントローラとSD-WANルータの間はTLSにより通信が保護されます。
BFD(Bidirectional Forwarding Detection)プロトコルはデフォルトで有効となっており、各トンネルで
実行されて損失、遅延、ジッター、パスの障害を検出します。障害を検出した場合、BFDは障害が発生した
IPsecトンネルを別の経路に切り替えます。
◆ SD-WANの機能:LBO(ローカルブレイクアウト)とは
ローカルブレイクアウトとは、Microsoft 365などの信頼できる特定のクラウドサービスのみを識別して
企業内のデータセンターに設置されたセキュリティ製品を経由させることなく、各拠点に設置されている
SD-WANルータから直接インターネット通信する機能のことです。ローカルブレイクアウトの機能により
各拠点のユーザは快適なクラウドサービスの利用と、社内ネットワークの混雑を軽減することができます。
※ ローカルブレイクアウトは、インターネットブレイクアウトとも呼ばれています。
◆ SD-WANの機能:ハイブリッドWANとは
ハイブリッドWANとは、Active/Active構成で複数の回線で冗長化されたWANのことです。SD-WANでは
複数の回線を全てアクティブで利用できるだけでなく、回線品質やアプリケーションに応じて利用回線を
柔軟に制御することができます。SD-WANでは回線品質(遅延、損失、ジッタ)をモニタリングしており
この回線品質に閾値を設定することで、品質を下回る回線を利用しないなどの最適な回線選択が可能です。
※ Cisco SD-WANソリューションガイド P.4の資料抜粋
◆ SD-WANの機能:セグメンテーションとは
SD-WANのセグメンテーションはVRFのような技術であり、1つのWAN回線内に複数のVPNとして分離
された別ネットワークを構築することができます。完全に分離されていることから、VRFで分離した時の
ように、異なるVPNセグメントであればIPアドレスやサブネットの重複も可能です。
※ Cisco SD-WANソリューションガイド P.4の資料抜粋
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