◆ SNMPコミュニティとは
SNMPコミュニティとは、SNMPで管理するネットワークシステムの範囲のことです。SNMPマネージャと
SNMPエージェントとの間で、同じコミュニティ名にすることで情報を共有することができます。監視対象
ごとに異なるコミュニティ名を設定することにより、効率的な管理とアクセス権限の分離を実現できます。
上図の通り、コミュニティごとにMIBへのアクセス権限を分けることができます。MIBへのアクセス権限は
RO、RW、Read-write-all の3種類があります。MIBへの書き込み(RW)できるということは、たとえば
SNMPマネージャがSNMPエージェントであるルータを強制的に再起動(MIBへ書込)できるようになります。
MIBへのアクセス権限 |
説明 |
RO |
Read-only。MIB情報の読み取りが可能 |
RW |
Read-write。MIB情報の読み書きが可能 |
Read-write-all |
コミュニティを含めてMIB情報の読み書きが可能 |
◆ SNMPのバージョン
SNMPのバージョンには、正確には「SNMPv1、SNMPv2、SNMPv2c、SNMPv3」の4つのバージョンが
あります。しかし「SNMPv2」は、ほぼ使用されることなく「SNMPv2c」へ移行したことから、多くの
ネットワーク製品でサポートしているSNMPバージョンは「SNMPv1、SNMPv2c、SNMPv3」の3つです。
その他のメーカーと同様、シスコ機器も「SNMPv1、SNMPv2c、SNMPv3」の3つをサポートしています。
SNMPバージョン |
RFC |
説明 |
SNMPv1 |
RFC 1157 |
SNMPコミュニティによる平文認証。SNMPトラップにおける再送確認なし。 |
SNMPv2c |
RFC 1901 |
SNMPコミュニティによる平文認証。SNMPトラップにおける再送確認あり。 |
SNMPv3 |
RFC 2273〜5 |
ユーザ単位の暗号化されたパスワード認証。SNMPトラップにおける再送確認あり。 |
SNMPv1、SNMPv2c、SNMPv3の違いは上記の通りです。推奨はv3ですが、v2cが広く使用されています。
SNMPv1とSNMPv2cに互換性があることもあり、現在でもSNMPv1が使用されている環境も多くあります。
SNMPv1で使用されるSNMPメッセージには以下の5つがあります。
SNMPメッセージ |
送信側 |
意味 |
Get Request |
SNMPマネージャ |
SNMPエージェントから得たい情報を、OIDを指定して要求
|
GetNext Request |
SNMPマネージャ |
直前に指定したOIDの次のOIDを指定して要求。
|
Set Request |
SNMPマネージャ |
SNMPエージェントの設定変更を行いたい場合、OIDを指定して要求 |
Get Response |
SNMPエージェント |
SNMPマネージャから要求されたOIDに対して、値を挿入して返信 |
TRAP |
SNMPエージェント |
SNMPエージェントが機器の状態に変化があった場合、自発的に送信
|
SNMPv2で使用されるSNMPメッセージは、上記の5つだけでなく、以下の2つも追加されています。
SNMPメッセージ |
送信側 |
意味 |
GetBulk Request |
SNMPマネージャ |
一括参照要求と言われるように、高速に複数の管理情報を取得。
|
Inform Request |
SNMPエージェント |
SNMPエージェントからマネージャへ通知する時に確認応答も要求。
|
SNMPv3では、SNMPv2と同じように上記の 7 つのSNMPメッセージを使用することができます。そして、
SNMPv3では、コミュニティ名ではなくUSM(User-based Security-Model)と呼ばれる、ユーザごとの
パスワード認証機能と、VACM(View-based Access Control Model)と呼ばれる、ユーザごとにアクセス
可能なMIBの範囲を定義できる機能が備わっています。
SNMPv3のUSMにおけるユーザ認証には以下の3つのセキュリティレベルがあります。セキュリティレベルの
用語はメーカによって異なります。以下の表は、Cisco機器におけるセキュリティレベルの説明となります。
セキュリティレベル |
認証 |
暗号化 |
結果 |
noAuthNoPriv |
ユーザ名 |
なし |
ユーザ名だけを使用して認証。暗号化なし |
authNoPriv |
MD5 or SHA |
なし |
HMAC-MD5 or HMAC-SHAを使用して認証。暗号化なし |
authPriv |
MD5 or SHA |
DES or AES |
HMAC-MD5 or HMAC-SHAを使用して認証。※1で暗号化 |
※1 次の暗号化レベルを指定可能 ⇒ 「CBC-DES」「3DES」「AES128」「AES192」「AES256」
SNMPv3を使用する場合、SNMPマネージャとエージェントの両方がSNMPv3に対応している必要があります。
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