◆ データトラフィックの制御 - WANでのシェーピングの必要性
広域イーサネットなどのWANを利用する場合、キャリアの契約帯域と、ルータとONU間との通信帯域に
速度差が発生することがよくあります。例えば、下図のように通信帯域幅の大きな速度差がある場合には
帯域幅が小さいリンクでトラフィックの輻輳が発生して、パケットドロップが発生してしまうことがある。
そこでパケットドロップを回避するためにWANルータ(CE)でトラフィックシェーピングを実装します。
トラフィックシェーピングは、トラフィックの混雑時に超過パケットをキューに格納し、一定の時間間隔で
スケジュールしてから遅れて伝送していく方式。トラフィックシェーピングは、シェーピングとも言います。
◆ 設定例 : Fe0/0から送出する全てのトラフィックを「20Mbps」にシェーピングを行う
Cisco(config)# ip cef
Cisco(config)# policy-map P-SHAPE
Cisco(config-pmap)# class class-default
Cisco(config-pmap-c)# shape average 20000000
Cisco(config)# interface FastEthernet 0/0 Cisco(config-if)# service-policy output P-SHAPE
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class-defaultでは、class-mapコマンドで定義された以外のトラフィックを指定します。上記の設定例では
class-defaultのみを指定していることから、全てのトラフィックに対しシェーピングを行うようにする設定。
一方、下記の設定例はCatalystスイッチでSRR(Shaped Round Robin)を利用してシェーピングする設定。
SRRは、パケットがキューから出力インターフェースへ送出される時のレートを決定するスケジューリング
サービスのことです。下記のコマンドにより出力I/F(FastEthernet)に20%の帯域幅の制限を設けられます。
※ CatalystをWANルータとして使用する場合は、Ciscoルータと同じようにその他のQoS設定をしましょう。
◆ 設定例 : Fe1/1/1 から送出する全てのトラフィックを「20Mbps」にシェーピングを行う
Catalyst(config)# mls qos
Catalyst(config)# interface FastEthernet1/1/1 Catalyst(config-if)# srr-queue bandwidth limit 20
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◆ ボイストラフィックの制御
速度差があっても必ずしもシェーピングなどのQoSを実装させる必要がないネットワーク構成もあります。
例えば、音声専用のネットワークインフラの場合です。音声専用のNWインフラの場合には、IP電話の1台
あたりの使用帯域幅(RTP+シグナリング)を算出できます。その算出値に基づいてWANの契約帯域幅を
決定するため、LAN側とWAN側とで速度差があってもトラフィックの混雑が発生することがないように設計
することからWANルータ(CE)でのシェーピングやポリシングなどのQoS制御は必ずしも必要ありません。
オフィス系のネットワークシステムの場合、PCのデータトラフィックとIP-Phoneのボイストラフィックが
混在する構成が一般的ですが、コンタクトセンター系のNWシステムの場合、音声専用ネットワークで構成
することがあります。その場合、トラフィックのマーキング(DSCP46)や、優先キューにパケットを格納
するものの、シェーピングやポリシング等のトラフィック制御は無駄な負荷になるので一般的に行いません。
◆ データトラフィックとボイストラフィックが混在する場合
データトラフィックとボイストラフィックが混在する場合、ボイストラフィックを最優先処理しパケット
送出する必要があります。例えばデータトラフィックとボイストラフィックの2つだけに分類して、ボイス
トラフィックを最優先処理するという要件だけであれば、WANルータではシンプルに以下の設定例でもOK。
※ 設定例では、CS3(DSCP24)、EF(DSCP46)、ACL100のいずれかに合致するトラフィックを音声トラフィックとして定義。
◆ 設定例 : 拠点側のWANルータ(CE)におけるボイスとデータの2分類のシンプルな設定
Cisco(config)# ip cef
Cisco(config)# access-list 100 permit ip 172.16.1.0 0.0.0.255
Cisco(config)# class-map match-any C-VOICE
Cisco(config-cmap)# match ip dscp cs3
Cisco(config-cmap)# match ip dscp ef
Cisco(config-cmap)# match access-group 100
Cisco(config)# policy-map P-QUE
Cisco(config-pmap)# class C-VOICE
Cisco(config-pmap-c)# priority
Cisco(config-pmap)# class class-default
Cisco(config-pmap-c)# fair-queue
Cisco(config)# interface FastEthernet 0/0 Cisco(config-if)# service-policy output P-QUE
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※ Ciscoの設定例では priority コマンドを使用する場合、必ず priority percent 15 のように絶対優先キューに対する上限を定義
する例が多いですが、トラフィックの少ない音声だけを絶対優先キューに格納する場合、上限帯域を指定する必要はありません。
ただし絶対優先キューはそのトラフィックの送出完了まで使用されるので、音声以外のトラフィックを格納するなら上限指定は必須。
WAN契約時にQoSオプションを申し込んだ場合は
キャリアでQoS制御を行います。QoSの適用範囲は
一般的にアクセス回線(エッジの網内スイッチから
ONUまでの間)。網内は広帯域のため不要です。
キャリア側機器で分類を行うためには顧客のWAN
ルータでパケットに優先度付けしてパケットを送出
する必要があります。キャリア側でIP Precedence
値で分類している場合は、以下のように設定します。
policy-map P-VOICE
class C-VOICE
set ip precedence 4
priority
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1対NのWAN構成である場合、下図のようにその1となるセンター拠点にトラフィックが集中するとパケット
ドロップが発生する場合がある。従って紹介したようにWAN回線契約時にQoSオプションを申し込むことで
回避できますが、ACLに基づいた拠点ごとのトラフィックシェーピングを行うことでも、その問題を回避可能。
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