◆ VTPとは
VTP(VLAN Trunking Protocol)はトランクポートからVTPアドバタイズメントと呼ばれるメッセージ
を送信して、スイッチネットワーク全体で設定されているVLAN情報の同期をとるシスコ独自のプロトコル。
VTPを利用することで、管理者は1台のスイッチに対してVLANの追加、名前変更、削除などを行うだけで
同じグループ( 同じVTPドメイン )の全てのスイッチにVLANの追加、変更、削除の情報が通知されます。
VTPアドバタイズメントはトランクポートでのみ伝搬されるので、VTPを利用する場合、スイッチ間の接続は
トランクポートにする必要があります。トランキングプロトコルは802.1Q、ISLの両方をサポートしています。
VTPによる同期の前提はVTPドメインが同じであることです。異なるVTPドメインからVTPアドバタイズメント
を受信しても同期は行われません。また、Catalystスイッチは1つのVTPドメインにしか参加できません。
◆ VTP - 3つのモード
VTPにはサーバ、クライアント、トランスペアレントの3つのモードがあります。Catalystは、これらの
3つのモードのうちいずれか1つで動作します。Catalystスイッチのデフォルトはサーバモードとなります。
VTPモード |
説明 |
VLAN
作成等 |
VTP
通知 |
VTP
転送 |
同期 |
サーバ |
サーバモードではVLANの作成、変更、削除することが出来る。このモードの
スイッチで設定したVLAN情報は、VTPアドバタイズメントで通知される。
VTPアドバタイズメントを受信すると、同期を行い、他のスイッチへ転送する。
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○ |
○ |
○ |
○ |
クライアント |
クライアントモードではVLANの作成、変更、削除することができない。ゆえに
このモードのスイッチが、VTPアドバタイズメント通知はしない。ただし
VTPアドバタイズメントを受信すると、同期を行い他のスイッチへ転送する。
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× |
× |
○ |
○ |
トランス
ペアレント |
トランスペアレントモードでは、VLANの作成、変更、削除ができる。ただし
設定したVLAN情報は、VTPアドバタイズメントにより通知されない。また
VTPアドバタイズメントを受信しても、同期しないが他のスイッチへ転送する。
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○ |
× |
○ |
× |
※ 他のスイッチとVLAN情報を共有するVTP機能を使用したくない場合、トランスペアレントモードに設定しておく必要があります。
◆ VTP - コンフィグレーションリビジョン番号
VTPアドバタイズメントはトランクポートからデフォルトで300秒ごとに送信されます。または、サーバモード
のスイッチでVLAN設定が変更された時点でネイティブVLAN(デフォルトはVLAN 1)から送信されます。この
VTPアドバタイズメントに@VTPドメイン名 AVTPパスワード BVLAN情報 Cコンフィグレーションリビジョン
番号の4つの情報が含まれます。今回はこのコンフィグレーションリビジョン番号について詳細に解説します。
コンフィグレーションリビジョン番号は、VTPアドバタイズメントで通知されたVLAN情報が最新であるのかを
確認するための情報です。初期値は0です。サーバモードのスイッチがVLAN設定を変更するごとに値が1つ増加
してからVTPアドバタイズメントで通知します。他のスイッチは、自身の保持するリビジョン番号よりこの値が
大きい場合には、VTPにより通知されたVLAN情報が最新であると判断して、VLANの設定情報を置き換えます。
このようにVTPサーバやクライアントのスイッチは、VLAN情報の内容を見てVLAN情報を更新するのではなく
リビジョン番号を見てVLAN情報を更新するかどうかを判断します。例えば、既存のスイッチネットワークで
そのVTPドメインで各スイッチがリビジョン番号 10 とします。そして新規追加スイッチのリビジョン番号が
20 とします。その場合、新規追加スイッチのVLAN情報がデフォルトVLANしかなくても、新規追加スイッチ
のVLAN情報の内容が優先されるので、既存のスイッチネットワークのスイッチのVLAN情報が全て消えます。
これを回避するために、新規追加スイッチは既存ネットワークの追加の前にVTPモードをトランスペアレント
にして、リビジョン番号を一度 0 にしてからクライアントモードなどに戻して追加することが推奨となります。
このような問題があることからVTPはあまり利用されません。スイッチドネットワークといえば、VTPを使用
しない設計が一般的です。つまり、VTPモードはトランスペアレントにしておくということが大切です。
◆ VTPプルーニング
VTPプルーニングはトランクリンク上で不要なVLANトラフィックの伝送を動的に止める機能です。この機能
により、動的なallowed VLANと同等の機能を提供することから、管理者が手動で設定変更することがなく、
無駄なVLANトラフィックを無くすことができます。VTPプルーニングでは、VTPアドバタイズメントを利用
して、トランクリンク上で無駄なトラフィックが流れていないかをチェックしています。
※ VTPプルーニングでは、デフォルトVLAN(VLAN 1、VLAN 1002 〜 1005)は、VTPプルーニングの対象外となります。
◆ VTPのバージョン
VTPには version 1、version 2、version 3 の3つのバージョンがあります。VTP version1とVTP version2
とでは互換性はないことから、VTPドメインを構成する際にはVTPバージョンを同じにする必要があります。
ソフトウェアによりデフォルトのVTPバージョンが異なる場合がありますので事前に確認しましょう。なお
version 2については、トークンリングのサポート、認識不能なTLVのサポート等の機能が備わっています。
version 3については、1〜1005だけでなく、拡張VLANの1006 〜 4094までがVTPの動作としてサポート。
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