◆ WANの基本構成とデバイス
WANで使用するデバイスと機器構成は以下の通りです。ただし、WANサービスの種類により異なります。
WANデバイス |
説明 |
DTE |
DTE(Data Terminal Equipment)はデータを送受信するユーザ側の機器。DTEはDCEを介して
WANと接続を行い通信する。WANがシリアル回線の場合、DTEはDCEから供給されるクロック信号
を利用して通信する。DTEはルータ、パソコンなどが該当します。DTEの日本語訳はデータ端末装置。
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DCE |
DCE(Data Circuit-Terminating Equipment)は、DTEから送られる信号をDCEが接続している
網に適した信号に変換して送信。WANの網から送られてくる信号をDTEに適した信号に変換し送信。
WANがシリアル回線の場合、DCEはクロック信号を送信する。DCEはモデム、DSU、ONUが該当。
WAN回線サービスの種類に応じてDCEの機器が異なる。DCEの日本語訳はデータ回線終端装置。
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CPE |
CPE(Customer Premises Equipment)は、契約した加入者宅に設置される通信機器の総称。
CPEは、DSUなどのDCEだけでなくルータなどのDTEなども含まれる。CPEの訳は顧客宅内機器。
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分解点 |
キャリアと加入者の責任分解点を示す。日本では、DSU、ONUもキャリアのレンタル機器となる
ことから責任分解点はDCE以降はキャリア側、DCEまでの配線部分までが加入者(企業)側となる。
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ローカルループ |
ローカルループは、加入者の敷地にある責任分解点からキャリア網のWAN機器までの回線のこと。
WANがPSTNやISDNの場合はローカルループ、WANがPSTNやISDN以外ならアクセス回線という。
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以下の項目ではDCEの代表例であるモデム、
DSU、ONUについて詳しく解説しています。
なお、現在ではアナログモデムはWAN回線の
DCEとして使用される事は、ほぼありません。
モデムの使われ方は、モデム内蔵のPCから
アナログ回線にダイヤルアップ接続を行って
企業ネットワークにアクセスして通信機器の
メンテナンスを行うといった管理アクセスの
手段として使用することが多いです。
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DCE |
説明 |
モデム |
PSTN (Public Switched Telephone Network) との接続時に使用されるDCE。PSTNは公衆電話網。
モデムを利用する場合はアナログ接続となるので、モデムはアナログのローカルループを終端する。
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DSU |
ISDN (Integrated Service Digital Network) との接続か、デジタル専用線との接続時に使用される
DCE。DSUを利用する場合はデジタル接続となるのでDSUはデジタルのローカルループを終端する。
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ONU |
IP-VPNや広域イーサネットとの接続か、高速なデジタル専用線との接続時に使用されるDCE。
ONU (Optical Network Unit) :光回線終端装置という名前どおり、アクセス回線は光ファイバー。
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◆ DTEとDCEのケーブル接続
現在企業ネットワークで使用されている主なWANサービスは、IP-VPNや広域イーサネットであることから
DCEの機器は ONU になることが多く、DTEとDCEとの接続ケーブルはRJ45のLANケーブルを使用します。
一方、従来のWANにおけるDTEとDCEとの接続ケーブルには、シリアルケーブルを主に使用していました。
その場合はルータにはシリアルインターフェースを用意して、DTEとDCEとの接続はその規格に適合した
シリアルケーブルで接続します。Ciscoルータでは下図の規格のシリアルインターフェース規格をサポート。
Ciscoルータで実際に現在接続されているシリアルケーブルの規格を確認するためには show controllers
コマンドを使用します。上図のルータではSerial 0/0にシリアルケーブルが接続しているので、以下の通り
show controllers s0/0 と入力することで、このシリアルケーブルの規格が V.35 であることが分かります。
Router# show controllers s0/0
Interface Serial 0/0
Hardware is ・・・
DTE V.35 ← シリアルケーブルがV.35規格であることを確認
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◆ Ciscoルータでの検証接続(レガシー構成の検証)
Ciscoルータでは、検証目的で2台のルータ間をDCEなしで、シリアルケーブルにより接続する事ができます。
2台のCiscoルータを直結できるシリアルケーブルをバックツーバックケーブルと言います。この構成の場合、
1台のルータがDTE、もう1台のルータがDCEとして動作する必要があります。バックツーバックケーブルの
のコネクタにDCEと書いている方がDCEとなるのですが、本来のDCEの役割同様にクロック信号をDTEに対し
供給する必要があります。ルータでDCEとしてクロック信号を供給するにはclock rateコマンドを使用します。
clock rateコマンドの単位は bps なので、64Kbpsの場合「64000」となります。以下の通りに入力します。
上図のR1が正しくDCEとして動作をし、クロック供給しているかはshow controllersコマンドで確認します。
R1(config)#interface s0/0
R1(config-if)#clock rate 64000
R1# show controllers s0/0
Interface Serial 0/0
Hardware is ・・・
DCE V.35, clock rate 64000 ← R1がDCEとして動作して、64Kbpsのクロックを供給していることを確認
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clock rateコマンドで64Kbpsと定義しても、sh interfacesで確認できる帯域幅のBWという部分は、変更
されません。EIGRPやOSPFなどのルーティングプロトコルではこのBWという値を見てメトリック値を算出
しているので、正確なメトリック値の計算を行うためには、bandwidthコマンドで変更する必要があります。
clock rateコマンドの単位はbpsですが、bandwidthコマンドの単位は kbps なので 64kbps なら 64 と入力。
show interfacesで「BW」の値が変更されたことを確認できます。なお、bandwidthコマンドで帯域幅
の値を変更しても実際の通信速度が64Kbpsになるのではなく、メトリック計算上の値として使用されます。
R1(config)#interface s0/0
R1(config-if)#bandwidth 64
R1# show interfaces s0/0
Serial 0/0 is up, line protocol is up
Hardware is ・・・
Internet address is ・・・
MTU 1500 bytes, BW 64 Kbit, DLY ・・・ ← show interfaces上の帯域幅が64Kbpsであることを確認
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