◆ IEEE802.11n(Wi-Fi 4)とは
IEEE802.11nは、理論上600Mbps、スループットで100Mbpsを実現する2009年9月策定の無線LAN規格。
IEEE802.11nでは、チャネルボンディングとMIMOという大きく2つの技術により高速化を実現しています。
先ずはIEEE802.11nの仕様を確認してみましょう。IEEE802.11n の場合は1つの規格であるにも関わらず
2.4GHz帯と5GHz帯の2つの周波数帯域を利用することができるので、下表では一部を分離して記載します。
※ IEEE802.11n 通信を行う際には無線LAN端末/アクセスポイントの暗号化をAESにする必要があります。
無線LANの伝送規格 |
IEEE802.11n |
周波数帯域 |
2.4 GHz帯 |
5 GHz帯 |
同時使用チャネル数 |
2ch |
9 ch |
利用可能チャネル数 |
13 ch |
19 ch |
最大伝送速度 |
600Mbps ※1 |
無線アクセス方式 |
OFDM |
屋外での利用 |
△ |
IEEE802.11bとの互換性 |
○ |
策定時期 |
2009年9月 |
※1 40MHzのチャネルボンディングを行い、さらに4つのアンテナ(4ストリーム)を使用した場合、理論上最大で600Mbpsの速度。
◆ IEEE802.11n - チャネルボンディングとは
チャネルボンディングとは、無線LANで使用する周波数帯域において、隣り合う2つのチャネルを束ねて
通信する技術のことです。IEEE802.11a /g では1つのチャネルが使用する帯域は20MHzでありましたが
IEEE802.11nでは2チャネル分の40MHzで通信することにより、伝送速度を2倍以上になります。例えば、
IEEE802.11aで36chは周波数5.18GHz、40chは周波数5.20GHzなので、5.20GHz − 5.18GHz により
IEEE802.11aが1つのチャネルで使用する帯域が20MHzであることが分かります。そして 802.11n では
下図のようにこれらの2つのチャネルを束ねて40MHzの帯域として使用できるので、高速化が実現します。
上図の通り、IEEE802.11nで周波数を5GHz帯を使用すると、最大同時チャネルが9であることが分かります。
一方で下図の通り、IEEE802.11nで周波数を2.4GHz帯を使用すると、最大同時チャネルが2だと分かります。
つまりIEEE802.11nにおけるチャネル設計では企業ネットワークでは5GHz帯を使用することが推奨されます。
※ 2.4GHzにおける40MHzのチャネルボンディングは他のAPの干渉を受けやすくなり、むしろ電波品質が
劣化してしまう可能性があるため、Ciscoの無線LAN製品ではサポートしていませんが、MIMOやフレーム
アグリゲーションの実装により、2.4GHzにおける11nでも高速通信を実現します。(5GHzよりは遅いです)
IEEE802.11n対応クライアントと、IEEE802.11n非対応クライアントが混在する環境では、802.11n対応クライアントは5GHz帯を
使用するように設計し、802.11n非対応クライアントは2.4GHz帯を使用するよう設計する事が推奨。パフォーマンスが向上します。
◆ IEEE802.11n - MIMOとは
MIMO (Multiple Input Multiple Output) とは、複数のアンテナを使用してデータを同時伝送することで
無線通信を高速化させる技術です。たとえば、下図では送信側、受信側の無線LAN機器において、ともに
2つのアンテナがあるとします。送信側の機器でデータを2分割して、2つのアンテナでその分割データを
送信します。受信側の機器はその分割データを2つのアンテナで受信してそれをもとにデータに復元します。
このように複数のアンテナを使用することで生じる複数の経路を1つの伝送路として見なして、データを
送受信することで高速化を実現しているので、アンテナの数が多ければ多いほど伝送速度が速くなります。
アンテナといっても、例えば無線LANクライアントになるノートPCに内蔵されたものは、とても小型ですから
最近のものでは、例えばAdvanced-N + WiMAX 6250のIntelのチップには2本( 2×2 )も搭載されています。
「2×2」というのは「送信用アンテナ2本、受信用アンテナ2本」という意味です。アンテナが2本ある場合は
2つのデータの通信路(ストリーム)を形成することができるのでストリーム数は「2ストリーム」と言います。
◆ IEEE802.11n - 通信速度 ( なぜ製品により理論上の最大速度がバラバラなのか )
802.11n規格に準じた製品といえど、製品によってチャネルボンディングに対応していなかったり、つまり
使用する周波数帯域(20MHzなのか40MHzなのか)が異なったり、製品によってアンテナの数が異なるので
ストリーム数が異なったりすることで、製品により理論上の最大通信速度が異なります。40MHzを使用する
ようにチャネルボンディングに対応した製品は多いですが、アンテナ4つ実装したアクセスポイントは少ない
ことから、一般的に300Mbpsくらいの理論上の最大通信速度を実現する無線LAN機器が主流と言えるでしょう。
IEEE802.11nの理論上の最大伝送速度 |
ストリーム数 |
20MHz使用 |
40MHz使用 |
1ストリーム ( 1×1 ) |
72.2Mbps |
150Mbps |
2ストリーム ( 2×2 ) |
144.4Mbps |
300Mbps |
3ストリーム ( 3×3 ) |
216.7Mbps |
450Mbps |
4ストリーム ( 4×4 ) |
288.9Mbps |
600Mbps |
IEEE802.11nでも、上図の「1ストリーム」と「20MHz使用」の場合では、アンテナが1つであることと、
チャネルボンディングも行っていない点から、802.11aやgと全く同じ通信状態なわけですが、54Mbpsでは
なく72.2Mbpsを理論上の最大伝送速度が実現します。理由はMIMOやチャネルボンディング以外の802.11n
における高速化の技術で実現できるからです。802.11nでは、例えばデータ送信の間の時間短縮を行えます。
◆ IEEE802.11n - 高速化を実現するために
@ IEEE802.11n の規格どおり、暗号化にはAESを採用する。
A IEEE802.11n ネットワークでは、11n 非対応のWLAN端末を存在させないようにする。
※ 11n 環境で、11n非対応のWLAN端末が通信を開始すると、11n対応のクライアントPCの速度は低下する。
B IEEE802.11n ネットワークには5GHz帯を使用するようにして、チャネルボンディングを行うようにする。
C IEEE802.11n ネットワークでは、11n 非対応のWLAN端末が存在する場合、802.11n対応クライアントを
5GHz帯を使用させるようにして、11n非対応のクライアントに2.4GHz帯を使用させるようSSID設計する。
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